『小説EV戦争』を読んで。下町ロケット好きにオススメ!!
『小説EV戦争』は「大阪の中小企業」が中国のEVタウン受注を目指して、自動車業界と家電業界の大手企業が手を組んだ「日の丸連合」との競争に打ち勝つ痛快な企業小説です。
- 初めに
- 印象に残ったとろ
- 分からなかった単語
- 脳漿(のうしょう)
- PFI
- PPP
- カバードボンド
- 勃発(ぼっぱつ)
- 金城湯池(きんじょうとうち)
- 飲差大臣(きんさだいじん)
- 鞄馬天狗(くらまてんぐ)
- 是非に及ばず
- 四角号碼(しかくごうま)
- 領袖(りょうしゅう)
- 精算解散
- 日和見(ひよりみ)
- シンジケートローン
- 薫陶(くんとう)
- 堰(せき)を切ったよう
- 瞠目(どうもく)
- 託ち(かこち)
- 呉越同舟(ごえつどうしゅう)
- 私淑(ししゅく)
- 投宿(とうしゅく)
- 要旨(ようし)
- 逢瀬(おうせ)
- 嬲る(なぶる)
- 白紙委任
- 口角泡(こうかくあわ)を飛ばす
- 策を弄する(ろうする)
- プロキシファイト
- 具申(ぐしん)
- 嫌中(けんちゅう)
- 労働改造所
- シュプレヒコール
- カーボンプライシング
- 形象工程(けいしょうこうてい)
- 最後に
初めに
初めに申しておきますが、この記事は『小説EV戦争』を読んで印象に残ったところや、分からなかった単語を調べた個人メモです。
紹介文や感想、考察を読みたい人は、Amazonなり、読書メーターなり、Bookliveなりを利用ください。そちらに書かれた内容以上の感想や考察は、いくら脳漿を絞ったところで今の私からは出てきません。
ただ、一つだけ私が思うことは、年初めに放送された「下町ロケット」を面白いと思った方にはオススメだということです。
印象に残ったとろ
中国のEV戦略について
本書では次のように説明されていました。
P205
「ガソリンエンジン車の部品は十万個以上必要で、そのうちエンジンに占める割合が三十%以上ある、つまり電池で動くEVはエンジンが要らなくなるので、それだけ部品数も少なくなり、重量も減るという理解は正しいですか?」
「部品は数え方によりますが、まあ大筋ではその通りです。そして中国がEVの普及に最も熱心なのはEVの構造が簡単で、基幹部品を組み立てればええだけやからです。EVはパソコンや携帯電話を作るのと同じ組立中心の工程だけなので、EVなら中国が勝てると思ってるんですな。そして、日本やドイツからEVで自動車産業の覇権を一気に奪う。そういう国家戦略でなりふり構わずにやってきよる。人材の引き抜き、産業スパイなんでもありや。技術は買うか、盗めばええと、考えてる。でも必ず失敗しますって。EVをパソコンと同じやと思ったら大間違いや。車は走る、曲がる、止まる、の3つの動きを制御せなあかん。これがホンマに難しいんです。」
社長の思い
ワンピースのルフィーが言っている「俺は海賊王になる」の中小企業の社長版です。
P207
「社長は会社のパンフレットの挨拶文で、EVの開発を通じて『この世界をさらに単純でフラットな構造に変えることが目標だ』と書いておられます。あれはどういう意味でしょうか?」
「別にそんな深い意味はおまへんで。ワシは九十年代前半からEVに取りつかれた。リチウムイオン電池の正極材を開発してましたから、最終目標をEVに置くことは自然な流れでした。でも日本の主流はEVではなくハイブリッドやった。ワシにはハイブリッドは複雑すぎました。使われている電池はニッケル水素でした。ワシはリチウムイオン電池でEVのように構造が単純でかつ、商取引も系列を超えたフラットなわかりやすい車の開発をしたいと思ったんです。」
リチウムイオン電池の正極材について
三元素系とリン酸鉄系の2種類があるようです。
本書では次のように説明されていました。
P319
「三元素系の正極材は層状構造になっていて、二次元にも三次元にもリチウムイオンが拡散できる経路を持っています。一方でリン酸鉄系の正極材はオリビン型の構造と言って1次元にしかリチウムイオンが拡散しません。それはリン酸鉄系の方が安全性に優れていることの証ですが、熱伝導性が弱くてEVのような高出力を必要とする製品には向かないと言われてきたのです。」
「リン酸鉄は簡単じゃない。高い粉砕技術が必要です。粒子を小さくすることでリチウムイオンの個体内移動距離を短くし、電解液との接触面積を広くすることで、リチウムイオンの充放電時間の出入りを容易にする必要があります。細かくできればできるほど、リン酸鉄の持つ欠点を克服できる。」
分からなかった単語
脳漿(のうしょう)
脳室(=脳の内部の空間)を満たす液。
「―をしぼる」(あらん限りの知能を働かせる)
本書では「お客様のために、脳漿を絞って考えろ」という表現で使われていました。
PFI
PFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)とは、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るという考え方です。
この考え方に沿って、日本の水道事業も民営化されてしまうのでしょうか。
PPP
公民が連携して公共サービスの提供を行うスキームをPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)と呼ぶ。
正直PFIとの違いがよく分かりません。
カバードボンド
カバードボンドは、社債のうち住宅ローン債権などの資産の裏づけのあるもの。世界金融危機後の安定性が評価されており、日本では経済産業省・日本政策投資銀行・金融庁が導入へ取り組んでいる。発行体のバランスシート上に残す方式が一般的であるが、オブリガシオン・フォンシエールのようなオフバランス型もある。
参考:ウィキペディア
勃発(ぼっぱつ)
事件などが突然に起こること。
参考:コトバンク
金城湯池(きんじょうとうち)
非常に守りの堅いたとえ。また、他から付け入り攻め込みにくい堅固な備えのたとえ。▽「金城」は金で築いた堅固な城。「湯池」は熱湯をたぎらせた堀のこと。
参考:goo辞書
私の考えた、例文は以下になります。
飲差大臣(きんさだいじん)
清朝の官職名。特定の事柄について皇帝の全権委任を得て対処する臨時の官を欽差官というが、その中でも特に三品以上のものを指す。
参考:ウィキペディア
鞄馬天狗(くらまてんぐ)
鞍馬天狗(くらまてんぐ)は、鞍馬山の奥の僧正が谷に住むと伝えられる大天狗である。別名、鞍馬山僧正坊。 牛若丸に剣術を教えたという伝説で知られる。鬼一法眼と同一視されることがある。
参考:ウィキペディア
鞍馬天狗でググると上位にモンストのキャラクタ出てきて、こんな真面目な小説にモンストのキャラを出すとか。。作者どんだけモンスト好きだよ。と一瞬戸惑ってしまいました。
是非に及ばず
当否や善悪をあれこれ論じるまでもなく、そうするしかない。どうしようもない。しかたがない。やむを得ない。
参考:goo辞書
本書では、上司が部下に対して「いいから口答えせずに、言われた通りにやれ」と言いたいときに、このままだとパワハラになりかねないので、言葉に背広を着せて見栄えを良くするための表現として使っている印象でした。
四角号碼(しかくごうま)
四角号碼(しかくごうま)は漢字の検索方式の一つ。漢字の四隅を形状により0から9まで番号を付与し、更に同一番号となる漢字を区別するために「附角」番号を付与し、最大5桁の数値で漢字を配列する。
参考:ウィキペディア
こんな漢字の検索方法があったとは驚きです。ただし、今だとグーグル先生が優秀すぎて使うことはないと思います。
「碼」の読み方が分からず、「石へんに馬」でググったらすぐに見つかりました。
因みに、これでヤードと読むようです。
領袖(りょうしゅう)
領袖とは、集団を率いる人。かしら。長。
参考:語源由来辞典
本書では領袖を表の世界のトップという意味で使っている印象でした。
P85
精算解散
会社の解散・清算とは、会社が行っている業務をすべて中止し、会社の法人格を消滅させる手続きです。
日和見(ひよりみ)
1. 有利なほうにつこうと、形勢をうかがうこと。
2. 空模様を見ること。また、その役の人
参考:コトバンク
本書では次のような使い方をしていました。
P131
戦争が公然と始まるのなら私も日和見は許されない。
私の考えた、例文は以下になります。
「そろそろ貯金が尽きそうなので、日和見せずに仕事を探すべきか。」
こんな使い方であっているのでしょうか?
シンジケートローン
シンジケートローンとは、お客さまの資金調達ニーズに対し複数の金融機関が協調してシンジケート団を組成し、一つの融資契約書に基づき同一条件で融資を行う資金調達手法です(※)。参加金融機関をアレンジャー(幹事金融機関)が募集する点において社債発行と似た面がありますが、シンジケートローンは金融機関からの「お借入取引」です。設備投資資金のような長期資金の調達を行う場合のみならず、コミットメントラインのような短期融資枠の組成においても有効な手法です。
※各金融機関は一つの融資契約書に基づき個別に貸出を実行します。
参考: 三井住友銀行
薫陶(くんとう)
意味
- 自分の徳で他人を感化すること
- 優れた人格で教え育て上げること
「一般的には薫陶を受ける」という使い方をするようです。
本書でも同様の使われ方をしていました。
p150
「そこで部長をしていらっしゃった原常務の薫陶を受けまして、・・・」
ニートが薫陶を受けるのはネットですかね。
堰(せき)を切ったよう
たまっていたものがどっとあふれ出すさま。こらえていたものが、一度に起こる様子をいう。「涙が堰を切ったように流れ出す」
参考:コトバンク
瞠目(どうもく)
驚いたり感心したりして、目を見はること。 「 -すべき事実」 「 -に値する」
私の思いついた例文は以下になります。
「通帳残高を見て瞠目する。」
託ち(かこち)
意味:他にかこつけて恨み嘆くこと。
慣用句:
託ち顔(かこちがお):他に事寄せ、そのせいにして恨み嘆く顔つき、また、思い詫びている様。
託ち種(かこちぐさ):そのことにせいにするためのたね。口実。
託ち泣き(かこちなき):恨み嘆いて泣くこと。
参考:goo辞書
本書では次のような使われ方をしていました。
p157
確かに、自分の不遇をかこちてばかりいた。
「託ち顔」で浮かんだがの、私と同じ時期に会社を辞めた先輩の顔でした。
呉越同舟(ごえつどうしゅう)
仲の悪い者同士や敵味方が、同じ場所や境遇にいること。本来は、仲の悪い者同士でも同じ災難や利害が一致すれば、協力したり助け合ったりするたとえ。
参考:goo辞書
本書では次のような使われ方をしていました。
P182
「日の丸連合」などと言っておきながら、内実は呉越同舟、それぞれの利益のためだけに働いていて、全く一体感がないのだ。
呉越同舟のベストオブザイヤーを決めるとするなら「ブラック会社の内実」ですかね。
私淑(ししゅく)
直接教えを受けたわけではないが、著作などを通じて傾倒して師と仰ぐこと。
「 -する作家」 〔直接指導を受けたことのある人に対して用いるのは誤り〕
参考:weblio辞書
意味を調べて、私が思い浮かんだ私淑する人は「島田紳助」でした。
なぜ、辞めてしまったのか。カムバック島田紳助。
投宿(とうしゅく)
(スル)宿をとること。旅館に泊まること。「温泉旅館に投宿する」
参考:コトバンク
宿泊だけ知ってればよくない?と思ってしまいました。
要旨(ようし)
要旨→筆者の言いたいことをまとめたもの。
要約→長い文章を論理的に短くまとめたもの
参考:要旨と要約の違いとは?
逢瀬(おうせ)
会う時。特に、愛し合う男女がひそかに会う機会。「たまさかの逢瀬を楽しむ」
参考:コトバンク
本書では「逢瀬を重ねる」という表現をしていました。
P248
勿論、ヨンジュがパルスンの令嬢と逢瀬を重ねていることは・・・
嬲る(なぶる)
1 弱い立場の者などを、おもしろ半分に苦しめたり、もてあそんだりする。「新入りを―・る」
2 からかってばかにする。愚弄する。「教師が生徒に―・られる」
3 手でもてあそぶ。いじりまわす。「おもちゃを―・る」
参考:goo辞書
女を男で挟んで嬲る。「この字考えたの誰だよ!」と突っ込みたくなります。
白紙委任
主義や方針、決議事項などに、条件をつけずにすべてを白紙の状態で任せること。
参考:コトバンク
本書では次のような使われ方をしていました。
p322
父親を裏切って、飛鳥科学の議決権をパルスンに白紙委任したこと……。
次のような意味で使っているように思います。
ダラダラ書いていますが、要は「トルネコの大冒険」の「白紙の巻物」のようです。手にした人が、委任したい事を自由に書き込める委任状です。
白紙委任状
受任者名,委任事項など委任状中の一部を記載せず空欄のままにしておき,相手方またはその他の者にその補充をゆだねた委任状。 受任者名を白紙としたものには,株主総会における議決権行使の白紙委任状,契約当事者の一方が後日契約に関する紛争が生じた場合の解決のために自分の代理人の選択を契約相手方にゆだねるための白紙委任状などがあり,委任事項を白紙としたものには,公正証書の作成を委任するに際し委任事項を白地にしておいて公証人の指示に従い受任者に記入させるものなどがある。白紙委任状は,補充をゆだねられた者が白地を補充したときに委任状としての効力を生じる。補充権者以外の者が補充したり,補充権者が補充権を濫用した場合は,表見代理となることが多い。
参考:コトバンク
口角泡(こうかくあわ)を飛ばす
興奮して口からつばきを飛ばす。はげしく議論するさまをいう。
参考:コトバンク
本書では次のように使われいたのですが、これは誤記でしょうか?
p335
役員が怒りの言葉で口泡を飛ばした。
策を弄する(ろうする)
あれこれと策略を用いる。
不必要な、もしくは不純な策を好んで用いる。
参考:コトバンク
最初、「策をいじする」と思っていました。
「弄る」で「いじる」以外に「まさぐる」という読み方もあるようです。
弄る(いじる)
① (必要もないのに)さわったり、動かしたりする。もてあそぶ。 「羽織のひもを-・る」 ② 本格的にではなく、趣味でする。遊びでする。何かをすることの謙称としても用いる。 「パソコンを-・っています」 ③ はっきりした目的・方針もなしに、あるいは部分的に組織などを改変する。 「機構を-・る」 ④ 弱い者をいじめる。困らせる。 「腰ぬけて鬼婆々となつて嫁子を-・り/浮世草子・禁短気」
弄る(まさぐる)
① 手をしきりに動かしてさぐる。 「赤子が母親の懐を-・る」 「ポケットを-・る」 ② 手で触れる。手でいじる。もてあそぶ。 「琴を臥しながら-・りて/落窪 1」
参考:weblio辞書
プロキシファイト
株主が株主総会において自らの株主提案を可決させるため、議決権行使にかかる他の株主の委任状を、会社の経営陣あるいは別の立場の株主と争奪する多数派工作のこと。 日本語では委任状闘争、委任状争奪合戦などと訳される。
参考:ウィキペディア
具申(ぐしん)
上役や上級機関に計画・意見などをくわしく申し述べること。 「意見を-する」
参考:コトバンク
嫌中(けんちゅう)
嫌中(けんちゅう)とは、中華人民共和国に関連する世界の事象で中華思想・中国共産党による一党支配体制・中国人の現地のルールを守らない言動等を嫌悪する態度の総称であり、日本の場合は歴史認識や政策など、歴史的・政治的な様々な対立点から、中華人民共和国に対して不信感や嫌悪感を抱くものである。なお台湾や満州族、チベット、ウイグルは含まず、日本人が多く訪れるように民族主義的・政治的言動する者が少ない日本の中華街周辺などは含まない場合が多い。
参考:weblio辞書
子供の頃に対馬に住んでいた私個人としては嫌中より、嫌韓(けんかん)の方が強いです。
嫌韓(けんかん)は、韓国を対象とした嫌疑・嫌悪などから同国民と距離を置きたい、関与したくないとの感情をあらわす用語。
参考:ウィキペディア
次の記事の衝撃は今でも忘れられないです。
労働改造所
労働改造(ろうどうかいぞう)とは、「労働を通じて改造する」理念であり、中華人民共和国で実施されていた反革命犯及び刑事犯の矯正処遇政策である。2013年11月に憲法違反として廃止された。物理的には、旧ソ連の強制収容所・グラーグに倣い造られた労働改造機関を指す
参考:ウィキペディア
シュプレヒコール
舞台で、一つのせりふを多人数が声をそろえて朗誦すること。 集会やデモなどで、参加者がいっせいにスローガンを唱えること。「シュプレヒコールが起こる」
参考:コトバンク
本書では、読んでて一番感情が昂ぶる場面で使われていました。
P510
会場からスタンディングオベーションが沸き起こり、それが「アスカ、アスカ」というシュプレヒコールに変わった。
カーボンプライシング
二酸化炭素(CO2)に価格を付け、企業や家庭が排出量に応じて負担することで、CO2の排出削減を促す施策の総称。主な施策に、化石燃料の使用に伴うCO2排出量に応じて課税する「炭素税」と、CO2の排出超過分や不足分を国同士や企業間で取引する「排出量取引制度」がある。
参考:コトバンク
形象工程(けいしょうこうてい)
ググると中国語のページしかヒットしませんでした。
因みに、本書では次のような意味付けがされていました。
「形象工程(政治宣伝用の見かけ倒し)」
最後に
本を読んでて分からない言葉を調べることは以前から実施いていたのですが、私の残念な記憶力のせいですぐに忘却されていました。
ですが、ブログに載せる前提でまとめようとすると、「嘘をつきたくない」「面白おかしくまとめたい」という思いから頭を使うため、多少は記憶に残るようになりました。
今後も実施していこうと思います。
以上です。
ここまで読んでくださった、ツチノコみたいな方はありがとうございました。